対談企画:訪日観光客を大きく取り込んだ阪急交通社に聞く今後の訪日インバウンド

中国向けプロモーション

訪日観光客を大きく取り込んだ阪急交通社に聞く今後の訪日インバウンド

株式会社阪急交通社様の訪日観光客向けのインバウンド施策の取り組みについて対談形式でおうかがいし、その内容をまとめました。

対談本編


三島:本日はよろしくお願いします。まずは阪急交通社様が訪日観光客向けに提供しているバスツアーの概要についてお聞かせください。

訪日インバウンド集客をWebプロモーションで行っています

宇和川:阪急交通社が昨年から取り組んでいるのは、「京都周遊」「京都奈良」「富士箱根の3つの訪日観光客向け日帰りバスツアーで、これらに関する訪日インバウンド集客をWebプロモーションで行っています。

三島:どのような経緯でメニュー化することになったのでしょうか。

宇和川:さかのぼると、2014年11月ごろからBtoC訪日インバウンドの取り組みを始めています。阪急交通社には法人向けのバスツアーのラインナップが豊富にありますので、その内容を翻訳して日本のお客様と一緒に周遊してもらうような発想から始まっています。しかし日本人向けのバスツアーを翻訳しただけでは全く反応がありませんでした。そこで、京都、富士箱根などのツアーを訪日インバウンド専用のコースに作り直したのが今のツアーの成り立ちです。売れ筋ツアーに絞り、毎日催行する点が売りで、なおかつ圧倒的な価格訴求でスタートさせました。特に京都周遊日帰りツアーは、オープン価格の2,000円でした。価格面では業界的なインパクトもあったと思います。
このバスが毎日走ってるだけでも広告になるだろうという当社の経営者の発想も後押しになりました。

三島:当時、日経新聞にも掲載があり、業界的にも衝撃が走ったのを覚えています。その後の価格の変更にともなって集客数に変化はありましたか?

宇和川:2,000円だったじゃないか!と言ってくるような方はあまりいませんでした。価格訴求が弱まったけれどもいいツアーだということが認められたのか、一気にお客さんが半分に減ったなどというようなことはありません。

価格を抑えた訴求は広告効果としてとても高かったということですね

三島:価格を抑えた訴求は広告効果としてとても高かったということですね。現在はどの国をターゲットに考えていますか?

宇和川:この企画を始めた2014年頃は、インバウンドプロモーションについてなにもわからなかったので、とりあえず翻訳したのが簡体語、繁体語、タイ語、英語、韓国語の5カ国でした。試行錯誤していくうちに残ったのは繁体語と英語で、それを4年ほど続けています。

三島:現在は当社が台湾や香港向けのWebプロモーションをご支援させていただいていますが、英語はアメリカなどの欧米を対象にしているんですか?

宇和川:どちらかというとシンガポールなど、アジアの英語圏を意識しています。

三島:今注力して訪日インバウンド施策を実施しているのは台湾、英語圏でいうとシンガポールということですね。

「流入」と「拡散」に絞ったWeb戦略

では次に、具体的に実践していることを教えてください。ターゲットに情報を届けるためにどのような取り組みをされていますか?

宇和川:Webでの広告配信のみで、その他は京都や大阪のホテルでチラシを配布する程度です。Web施策はリスティング広告、アドネットワーク、SNS、外部サイトへの記事投稿、インフルエンサーも活用しています。


三島:Webでのプロモーションだけに絞った理由はなんでしょうか?

宇和川:いいツアーだという自負があったので、知ってもらえさえすれば必ず売れると思っていました。まずは流入と拡散が必要だったので、そこに着目して決めました。検索連動型広告を使ったり、ディスプレイネットワークか、バナーか・・・というところからはじめました。

三島:Webサイトへの流入は運用型広告で、情報の拡散はインフルエンサー広告で、という使い分けをしているんですね。実際に運用されているなかでの成功・失敗談を教えてください。

宇和川:YouTuberをつかったプロモーションは思った以上に効果がありました。台湾・香港でインフルエンサーマーケティングはこんなに効果があるのか!と驚きました。

三島:インフルエンサー経由で直接コンバージョンにつながったりしましたか?

宇和川:はい、台湾の有名インフルエンサーはフォロワーの数が多いことにとてもびっくりしました。他には、繁体語圏向けの日本旅行紹介サイトでFacebook実況を行ったこともありました。約30分の内容でしたがそれもとても反響がありました、また行いたいと思っています。

三島:Facebook実況は初めから効果を期待していましたか?

宇和川:正直なところ、バーター企画だったので全く期待していませんでした。そんなの効果あるのか?と思っていましたが、視聴者も多く、「どこで購入するのか?」「ガイドはいるのか?」というような反応があったりしてとても驚きました。また、YouTuberの方に実際にツアーに参加していただきツアーの様子を動画撮影して、編集して掲載していただいたところ、翌日には5万回再生されていたのにも驚きました。

三島:ライブ配信の文化は中国や台湾が先行していますね。フルスピードでは中国のインフルエンサーに地方のお土産店へ訪問してもらい、店内の内容をスマホで実況するという取り組みを行っており、前回は350万回再生を記録しました。このような相互コミュニケーションが取れる発信が契約にまでつながるというのは素晴らしいですね。宇和川様のお話を聞いて改めてインフルエンサーマーケティングを行う意味を感じました。

現地理解が必須な海外プロモーション

三島:一方で失敗してしまったことは何かありますか?

宇和川:失敗はたくさんありますよ、当時のことを思い出していたら笑えてきて・・・

三島:ぜひ教えてください(笑)

宇和川:当時はリスティング広告の運用方法もわからず、見よう見まねで、日本語をそのまま翻訳しただけのリスティング広告などを出していたりしました。結果大失敗で途中でやめました!外国人目線での検索キーワードや検索意図を全く理解しておらず、それが失敗の要因だったと思います。今はフルスピードでキーワードを精査して運用してもらっています。また、中途半端な純広告(バナー広告)は効果は出にくいように思います。やるならサイトをジャックするぐらいの規模で行わないとです。

三島:我々も訪日インバウンドの事業を始めた当初は日本人だけでいろいろと考えていたんですが、中国人のスタッフが加わった時に、知識レベルだけでなくサービスの理解や納得感も向上しました。翻訳の内容を見ていたりすると、内容が曖昧だったり、中国ではそもそもGoogle翻訳が使えないにもかかわらずGoogle翻訳を使っているために中国国内で閲覧できないという現実があります。そういう部分は現地理解として大切ですし、情報収集も難しいですよね。

宇和川:我々も現地の代理店さんなどにいろいろ聞いて回って情報を集めました。

三島:私達も、もうひと工夫しないといけないですね。
三島:他にはなにかありますか?

宇和川:インバウンドの成功例に倣って日本のツアーでインフルエンサー施策にトライしてみたのですが、結果は散々だったことは一生記憶に残るでしょう。商品の内容も良かったので、もしこのツアーに予約が殺到したらどうしよう、とツアー担当者と話していたのですが、全く反応が無く大失敗に終わりました。
そのプロモーション予算でビラ配りに行ったほうが良かったんじゃ?という話をしました(笑)まだまだ日本ではインフルエンサーマーケティングは言葉だけがひとり歩きしているのかも知れません。ただやればいいという状況ではないようですね。

三島:インフルエンサーマーケティングはやはり難しいですよね。

宇和川:もし今後インフルエンサーマーケティングを行うことを検討している方は、単発の投稿依頼ではなく、半年~1年程度の継続的な契約期間を設けて、一緒にサービスを盛り上げていこうというストーリーを共有しながら進行することが必要なのではないかと思います。単発施策だとインフルエンサー側としても熱が入らないでしょうし、それを繰り返すことでコストもかさみます。それが失敗の原因かもしれません。ある程度の期間、長く携わってもらえる「応援団」のような起用のほうが頑張ってもらえるように思います。サイトへの集客を重視した条件で協力を依頼して、達成率に応じて報酬が決まるような仕組みにしておくのが良いやり方ではないかと思います。まだまだ試行錯誤の最中です。

三島:語れる失敗談がこんなにあるっていいですよね

宇和川:失敗ネタは山ほどあります。でも失敗から次の発想や施策が生まれるので失敗は恐れないようにしています。

三島:宇和川さんからお聞きするトライ&エラーの話は皆さんが知りたい内容ですし、大変勉強になりますね。

今後について


三島:訪日台湾旅行者は引き続き一定数の増加が見込まれていますが、今後も台湾からの旅行者をターゲットにしていきますか?それとも訴求する国の数を増やしていきますか?

宇和川:簡体語圏はハードルが高いですが、挑戦したい気持ちがあります。旅行系メディアへの出稿も検討していますし、ツアーのラインナップを増やしてリピート策を練らないと、という考えもあります。
会員制についても考えなければならないと思っています。

三島:今は台湾を中心に集客を行っていますが、母数の多さも考えると今後は中国に向けて展開していくことも考えられますよね。

宇和川:上海などもいいと思うんです、我々日本人が行きやすいということは、彼らも来やすいはずですし。

三島:そうですね。

宇和川:今後なにがヒットするかはわからないのですが、現在の台湾向け施策以外にもなにかできるようになればいいなと思いますね。


三島:これまでの取り組みや経験を通して、今後こんなサービスがあればいいなというものはありますか。例えば、先ほどおっしゃっていた顧客形成ができるようなものなどでしょうか?

今後のインバウンド取り組みについて

宇和川:あったらいいなと思うのは、チャットボットなどでしょうか。現在対応するスタッフはいるのですが、外国語で問い合わせに対応できるコミュニケーション要員の継続的な確保は難しいですから、基本的な質問に対してはチャットボットに任せたいと考えることはあります。少人数で運営しているので、問い合わせ対応が簡単になるようなものがあるといいなと思っています。

三島:今は何名で運営されているんですか?

宇和川:4名前後です。

三島:それはとっても大変ですね!

三島:今後、訪日観光客を誘致するうえで、押さえておくべきポイントはなんでしょうか。

宇和川:ゼロからはじめるなら、まずツアーの内容を紹介するコンテンツはとことん作り込んだほうがいいと思います。コンテンツマーケティングの基本ですね。
次にとにかく「広告を打て」です。良いページを作ったからと言って、誰にも見てもらえないと意味がないので、思い切って広告は打ったほうがいいと思います。ページを見てもらって知ってもらうのが肝要なので、まずはお金をかけてしっかり露出していきましょう。直接コンバージョンにはつながらないかも知れないですが、KPIをもう少し手前に設定して、読了率やクリックコンバージョンを目標にするのが良いのではないかと思います。またSEOは後回しでもいいと思います。ゼロから始める際、まず最初にSEOに時間とお金をかけるよりも広告で集客することに注力したほうが私はいいと思います。

三島:これから初めたい方は、少し予算はかかるが、認知拡大のために拡散しよう!ということですね。

宇和川:サイトも広告も、今の日本語ページを翻訳しただけの状態で公開しているものが多いですが、そうではなく、メッセージを届けるためにしっかりと制作することが大切だと思います。予算が限られているケースは多いと思うのですが、短期間でもいいのでインフルエンサーを使うなどして自社の勝ちパターンを早めに掴んだほうがいいですね。

三島:成功例をパターン化していくのも大切ですね。現在お手伝いをしているWebプロモーションでも次のステップに繋げられるように尽力したいと思います。

本日はありがとうございました。

インバウンドプロモーションの成功例をパターン化する


宇和川 匠 氏
株式会社阪急交通社 
営業統括本部 ウェブ推進部 ウェブ推進課 副課長 
1991年阪急交通社に入社。20年にわたり情報システム部門で基幹システムの構築、ネット決済導入、顧客データの統合管理とCRM推進を担当。
2013年に同社現ウェブ推進部に異動。
自社ECサイト阪急トラベルコムの管理運営、Web広告を含めWebマーケティング全般に携わる。
2017年に自社オウンドメディア(たびこふれ)立ち上げメンバー、同メディアのライターとして記事も執筆している。

三島 悠輔
株式会社フルスピード
エンゲージメントマーケティグ事業部 訪日ビジネス開発部 部長 
2010年フルスピード入社以降、数百社に対してSEO、リスティング広告を中心としたWebプロモーションのコンサルティングを行う。2014年より中国・タイ・インドネシア向けにWebプロモーションを展開。
2015年より訪日に特化した新規部署を立ち上げ。中華圏をメインに、訪日インバウンドプロモーション・越境ECのマーケティングを支援、空港免税店や百貨店向けの来店プロモーションなど実績多数。
2017年より独立行政法人中小企業基盤整備機構の販路開拓支援アドバイザーに就任



<参考資料>
フルスピード「海外SNSに関するアンケート調査レポート」http://www.fullspeed.co.jp/press/wp-content/uploads/2017/07/fullspeedreport20170726.pdf

WORLD MAP OF SOCIAL NETWORKS
http://vincos.it/world-map-of-social-networks/

 


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sai

sai

日本語同時通訳専攻の在日中国人マーケター。 日本語・中国語言語能力を活かし、インバウンド事業を4年間携わってきており、約100社企業様にインバウンドプロモーションのプランニング支援。

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